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【ブルースインタビュー#19】鶴岡怜志選手 「一生、宗像に住みたいと思っていた」

2022年05月03日(火)

一生、宗像に住みたいと思っていた。

鶴岡怜志選手

 

 飄々とした語り口。

 チーム愛も、さらりと口にした。

 今シーズンでチームが活動休止になる。その話になったときだった。

 

「悲しいですね、チームがなくなるの。10年やってきました。仲のいい先輩、仲間もいる。一生、宗像に住みたかった。まだラグビーもしたい。なくならないでほしい」

 

 鶴岡怜志(さとし/FL・NO8)が宗像サニックスブルースに加わったのは2013年。今季が10シーズン目となる。

 宗像ってどこ?

 最初はそんな感じだった男は、無名の選手が飛び込み、チャンスをつかめるブルースが好きだ。

 

 唯一無二。

「特別なチーム。本当に惜しい」と、心の叫びを言葉にする。

 

 千葉で生まれた。その故郷で楕円球と出会い(志学館高校)、進学もした。

 縁もゆかりもない宗像にやってきたのは、流通経済大学4年時だった。

 

 内山達二監督に「(プレーを)見てもらえるから、練習に参加してみたら」と勧められて、2日間、チームに加わった。

 合格の知らせをもらい、すぐに西へ向かうことを決めた。

 

 大学時代、レギュラーだったわけではない。ラグビーを続けられる場を与えられて嬉しかった。

 でも、若い頃の自分を思い出せば「舐めていた」と振り返る。

 必死にやっていなかった。

 

 1年目のシーズンが終わった時だった。当時の採用担当だった森山智さんに言われた。

「どうすんだ? いまの(姿勢の)ままなら、他のチームを探した方がいいぞ」と。

 

「あ、プロ(選手として活動する)って、こういうことなんだなと、その時にやっと理解した気がします。結果を出さないと、必要とされない」

 

 その日から変わった。

 先輩の高島卓久馬(HO)らとの居残り練習も当たり前になった。

「いまの若い選手たちは真面目。よく練習します。だから、僕みたいな者が(経験から)何かを言う必要もない」と笑う。

 

 そんなことはない。

 宗像で目覚め、努力し、セブンズ日本代表として世界と戦った経験は後輩たちを刺激するだろう。

 2014年のアジアセブンズシリーズ(マレーシア大会)でサクラのエンブレムを胸につけた。

 

「当時は、セブンズはあまり注目されていなかったので、代表の遠征中や合宿中に(ブルースの)みんなが試合をしたり、勝っているのを見ると、自分もそっちに戻りたい、と思っていました」

 

 ただ、セブンズでの経験値は確かに自分を変えた。

「以前は、大きな外国人選手との対戦はあまり得意ではなかったのですが、そういう感覚が消えました」

 

 ブルースでの在籍年数が増えるとともに、自身のプレースタイルにも変化があった。

 若い頃はアタックが好きだった。いまはディフェンスで光る。どう動けば自分がチームに必要とされるか考えた結果だ。

 

「アタック力がある選手は、例えば(ジャック)ポトヒエッターとか、他に何人もいました。それなら自分は防御をやろう、と。タックルミスをなくそう。ドミネートするタックルをしよう。そう考えているうちに、変わっていきました」

 年齢を重ねるうちに、バランスのとれたプレーヤーになった。

 

 今季は第10節(8試合実施)までの5試合に出場。シーズン序盤は短いプレータイムしか得られず、「なかなか自分のプレーを見せられなかった」。

 しかし4月3日、グローバルアリーナでの清水建設江東ブルーシャークス戦で80分間ピッチに立ち続けた。

 

 前半は9-24と劣勢だった、その試合。鶴岡はベテランらしい落ち着いたプレーを見せ、逆転勝ちに貢献した。

 ファンを沸かせた一戦を回想し、「(リードされても)焦りはなかった」と言う。

「攻めれば(トライを)取れると分かっていました。ブレイクダウンでも負けていなかったし、うちの外側の強いランナーがやってくれると思っていました」

 ブルースの良さ、強さ、魅力を知っている。

 

 その愛するチームが今季限りで活動休止となる。

 できることは、最後まで走り続けることだけだ。残りの日々を悔いなく過ごすと覚悟を決める。

 

「(順位決定戦に出場して)マン・オブ・ザ・マッチを取りたい。これまで一度もないので」

 妻に、「(授与される)帽子をもらってきて」と言われた。そう話し、目尻を下げる。

 

 初めて玄海グラウンドを訪れた時、最寄りの東郷駅は現在のように整備されておらず、まだ質素で小さかった。

「田舎だなあ、と思いました。グラウンドに着いたら、小さい選手が多いな、と感じたことを覚えています」

 

 いま、それらすべてのことが愛おしい。

 人生はおもしろい。