
年齢を重ねるにつれて、いつの間にか、3月が、苦手な季節になりました。腰を痛めるのも、歯が痛くなるのも、なぜかいつも、この季節だったような記憶があります。それは、いわゆる「木の芽時」だからでしょうか。木に新しい芽が生まれてくるように、人の体から毒が噴き出してくる……といった印象。美しい夜桜トンネルに驚嘆しながらも、訳もなく、早く4月になればいいのに、と思いながら、過ごす毎日。順調なときは、なんの問題も起こらないのに、物事がいったん上手くまわらなくなると、渦に巻き込まれたように、なかなか、抜け出せないというのも世の常。そして、渦に巻き込まれたときに助かる方法があるとすれば、あがくのをやめて、渦に身を任せてみる、ということ。渦に、身を任せていったときに、渦にポ〜ンと放り出されるように、体が自由になるという物理的な真実は、物事が好転しないときに、私たちを助け出してくれるような気がします。痛みを感じるときに、痛みに抗わず、痛いなぁ、とそのままに受け入れていくこと。それが、春という季節が教えてくれる、大切な姿勢のような気がしてなりません。
ブルースのみならず、日本ラグビー界の期待さえも一身に集める19歳の小野晃征選手が、本日3月30日に、クライストチャーチから、ニュージーランド航空→日本航空と乗り継いで、先ほど、福岡に着きました。日本代表の活動期間を除いては、明日から、ブルースの一員として、地元・宗像に本拠地を置いて、生活することになりました。ニュージーランド育ちの「19歳」にとって、日本で、そして宗像で過ごす春とはどういう季節になるのでしょう……。福岡空港に到着早々、小野選手は、次のように話してくれました。
「福岡に来られて、本当に嬉しいです。日本に来ての印象は、とても大きな都市だなぁ、ということ。これまで住んでいたニュージーランドと比較しても、日本では、いろいろなスピードが速いので、慣れるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、いまは、そういった不安よりも、楽しみだという気持のほうがずっと強いです。日本の文化はまだよくわかりませんが、そういった意味でも、新しいことを学ぶ良い機会になると思っています。ラグビーさえ、ちゃんとやっていければ、それ以外のことは、順調に進むはずで、とくに不安は感じていません」
小野晃征という生きのいい、新しい芽が加入したブルース。一人の強い個性が、ブルースというチームを、どのように変えていってくれるのかは、間違いなく、今シーズンの楽しみの一つです。新しい芽が花を豊かに咲かせるためには、まず、「木」自身が毒を出して、強靭に生まれ変わらなければならないでしょう。痛みを、受け入れてみること。渦には、あがかずに、静かに身を任せてみるということ……。長いシーズンの初めに、まず、他人ではなく、自分自身のなかから、つらいけれど毒を出していく、という過程を経ずには、次の、ホンモノの飛躍が訪れることはないでしょう。それは、まさしく、全員参加の作業です。
「日本語より、英語のほうが、自分の気持を正確に伝えられるので、ぜひ、英語で話させてください」と穏やかに話す、まことにユニークな日本人選手、小野晃征と、英語で話し、どこか不思議な気持になりながら、そんなことを強く感じました。